豊穣の角の覚書

マンガのお仕事をしていた頃 &今の暮らし あれこれ

久々の電話

「もしもし」

地を這うような低い声 無愛想な応答

 

作業の進み具合を探ってくる編集者に対して張った予防線だ

 

「まだそんなことしてるんですか⁉︎」

呆れ半分 懐かしさ半分で笑って問えば

「ああ!」 なんだ君か と声のトーンが跳ね上がった

 

一転して早口で話す陽気な声

話の内容は何も伝わってこなかったが楽しそうだ

 

そこで目が覚めた

 

夢の中で 彼岸に電話をかけていたのだ

 

思い返して 私は少し安堵した

 

前触れもなく 手がけていた原稿もそのままにして逝ってしまったのだ

心残りや未練があったのではないかと心配だったが

どうやら向こうに行っても描いているらしい