豊穣の角の覚書

マンガのお仕事をしていた頃 &今の暮らし あれこれ

怪談?

顔見知りの漫画家さんに 1日でいいから手伝って欲しい と請われたことがある

 

かなり切羽詰まった状況で

郊外の小さな旅館の一室を借り

漫画家さんの同業のご友人が確か2人か3人

私ともう1人 ツテを頼って頼んだという 漫画家さんとも初対面の人がいた

 

当然 徹夜

 

殺伐とした感じはなく 雑談を交えながらではあったけれど 手は動かし続け

夕飯はコンビニおにぎりとお菓子で ひたすら描く

 

やがて夜も更けた頃

何がきっかけだったか 初対面さんが

 

「ここ いますよね」と のたもうた

 

は?  

 

「そこの隅にいて ずっとこっちを見てる」

 

あ 霊とかそういうの?

だから何?

 

誰も何も反応しない

黙殺 

 

「あ 怖がらせちゃったかなあ

すみませんーあたし霊感あるんでー(笑)」

 

当人は ご満悦で話を打ち切った

 

本当に霊がいたのか

思い込みか錯覚か

注目を浴びたいがための狂言

 

なんでもいいし

どうでもいい

原稿を吹き飛ばしたり インク瓶をひっくり返したりして邪魔するわけでなし

 

結局 

チェックアウトまでに原稿は仕上がらず

私と初対面さんを除く面々は

漫画家さんのお友達のお宅に移動して作業を続け

たらしい

確か 昼間はご家族が 全員お仕事で留守だということだったと思う

 

旅館の宿泊費や ページ数に対して多すぎるアシスタントへの報酬 

これを原稿料から差し引くと 利益はほんのわずか

 

それでも たとえ相当無理なスケジュールでも 次 や 今後の依頼のために 引き受けてしまう人も多かった

 

締め切りに間に合わないことを 落とす というが

考えるだに恐ろしい

作画も大変だけれど 受けた仕事の ストーリーが思い浮かばない時の焦燥感たるや

 

幽霊何するものぞ である